医療法人ライフストリーム オレンジ歯科 院長ブログ

歯医者が嫌いな予防歯科医の診療風景

保険診療での咬合再構成~咬合崩壊の現場から~

女性:長い間虫歯を放置してきたが、奥歯に歯を入れたい

虫歯になった奥歯を放置している人は少なくない。
これが1、2本なら埋めたり被せたり、どうとでもなるのだけれども、
多数歯が崩壊していると困ったことになる。咬合崩壊だ。

臼歯部の齲蝕を放置して歯冠部分がほぼ崩壊してしまっているので、

咬合時にこういう状態になってしまっている。
上に冠を被せたくても、冠が入る隙間が無い。

 

左上、左下

咬合時の右上下

この状態から奥歯に歯を入れるためには、咬合挙上(噛み合わせの高さを上げる)
しないといけない。しかし、奥歯の噛み合わせを高くすれば、当然前歯の部分の
噛み合わせも高くなるので、上下の前歯の間に隙間ができてしまう。

つまり・・・奥歯の噛み合わせが下がってしまってから噛み合わせの高さを
上げようとすると、奥歯も前歯も全部の治療が必要な、大変な事になるわけだ。

まぁこれを自費でやっていいのなら、奥歯の残根を全部引っこ抜いて
インプラント+矯正で何とかなるだろう(多分数年かけて500万円くらい?)。
けれどもこれを保険でやってくれということになると大変である。

ま、これを保険でやるなら、臼歯の残根を全部抜いて義歯にして咬合挙上、
それから残った上の歯の神経取るか生PZで全部補綴、という感じになると思う。
それか、「無理です」と断られると思う。

以下のは、たまたま僕がこういう根っこを何とかして使うのが好きなんで
何とかした例なんだけど、普通は大臼歯部分の残根は抜歯されると思って下さい。

 

左上の根管治療から始め、コアを築造。

左上のコア築が終わったら、左下もFMCを除去してコアを築造。

 

で、左上下に同時にブリッジを入れた。

すると、当然前歯がこんな感じで空いてしまう。

この状態からちょっとずつ左に入れたブリッジの咬合を低くしていき、
本人が何とか我慢できる高さまで調整。

左の咬合に慣れたら、今度は右上にブリッジを入れた。

右下にブリッジは入れられなかった。残根の状態が悪すぎたので。


最後に上の前歯を補綴&CRで何とかした。


という話なんですが、
とにかく、奥歯がこうなってからの治療というのは本当に大変ですので、
なるべく何とかなるうちに来院をお願いします。

奥歯が無くなったり、歯ぎしりなんかですり減って噛み合わせが低くなると、
今度は前歯に負担がかかってきて、前歯の冠が取れたり壊れたり、最悪抜歯に
なったりしますので、とにかく奥歯を大事にして欲しいのです。